キョン
Muntiacus reevesl
Muntiacus reevesl
2024年6月1日から2025年2月25日までに調査地点A・Bに設置した2台の自動撮影カメラで撮影されたキョンの動画78枚をもとに個体識別を行い、その活動時期と活動時間を調査しました。調査方法は既報 (野生動物 をご覧ください)のとおりです。 。
結果および考察
キョンの個体別月別出現頭数を表1に示しました。
A・B、2地点合計の撮影回数は78回,撮影された頭数は86頭でした。うち、オスは49頭、メスは17頭、性別不明は20頭でした。
オス個体のうち個体識別できたのは44頭で、それぞれ、個体A,B,C,D,Eの5個体と袋角が未熟の若齢オス1個体が確認できましたが、メスは1つの個体Aしか確認できませんでした(写真1、2)。なお、個体識別できなかったのは、オスで5頭、メスで11頭でした。このように、個体識別率は、オスで89.8%(44/49)と高い割合で確認することができましたが、メスでは35.3%(6/17)とオスに比べて低い割合でした。
この表1から活動個体と活動時期についてみると、オスAが6月1日に初めてこの調査地に現れましたが、6月5日以降、若齢オスを除き12月8日まで現れることがありませんでした。オスAが居たのはわずか5日です。一方、メスAはオスAに続き6月12日に現れ、その後毎月1〜2回は現れており当調査地が行動圏内と思われます。
12月以降は、オスの活動が頻繁に見られるようになりました。まず、オスBが現れ、続いてオスAが、1月にオスCが、2月にオスDとEが現れ、現在5個体が当調査地を巡回しているようです。キョンは周年繁殖するそうですが、千葉県でキョンの出産が多い月は5-10月という報告もあり、妊娠期間(約210日)を考慮すると12-3月頃が繁殖期とも考えられ、オスの活動が活発になっていると思われます。
最後に、性別の違いによる活動時間について、図1,2および表2に示しました。これは、撮影時間を性別ごとにみた図と表です。
オスは、日中に多く活動していること、メスは、薄明薄暮の頃に多く活動し、日中はあまり現れないことがわかると思います。また、このデータから、日中にキョンをみたら90%近くはオスの可能性が高いこともわかりました。
個体識別では、オスの識別率が高いことをお話ししましたが、このように日中の行動が多いことが、識別率を高くしている要因と考えます。また、メスはオスに比べてとても神経質な動物であることもわかりました。キョンがこの調査地に現れてまだ8ヶ月です。この5頭のオスは今後どうなるのか、メスの個体は増えないのかなど、どのような展開になるのか注意してみていきたいと思います。
2022年から3年間の季節区分別毎の撮影回数割合(出現割合)と繁殖確認回数
3年間で初めて2024年6月より12月まで継続的に撮影されました。現在、オス2頭とメス1頭が確認されています(顔の模様や角の形で個体識別が可能です)。今まで継続的な棲息が確認されていなかったので、ついにここまで棲息域を拡大してきたのかと思います。季節的な活動パターンはまだわかりませんが、12月に入り、オス同士が追いかけ回す行動をしている動画がいくつかありました。今後繁殖が確認されるかもしれません。
夜間に歩き回るメス(10月)と雄が雄を追いかけ回す行動(12月)